本文
エコツーリズム推進法に基づき、上市まちのわ推進協議会が作成した「上市町エコツーリズム推進全体構想」が環境大臣、国土交通大臣、文部科学大臣に平成29年2月7日付けで認定され、同月15日に認定証が交付されました。
上市町は、富山県の県庁所在地である富山市の東に位置し、新川平野の中央に位置する内陸の町です。面積の8割を山林が占め、西には富山平野が広がり、水田・耕作地帯と市街地が存在しています。町の東端には、中部山岳国立公園に指定されている名峰剱岳をはじめとした北アルプス立山連峰がそびえており、平野部から剱岳山頂まで約3,000mの標高差を有し、多彩な動植物の生息地や豊富な水資源など、自然環境に恵まれた地域です。
剱岳は古くから山岳信仰の山として知られ、町内にはそれを物語る歴史文化遺産が多数存在しています。中でも大岩山日石寺の本尊である岩に直接彫り込まれた高さ3mを超える「磨崖仏」は、中部地方における最高傑作とも言われ、その重要性・芸術性の高さから国の史跡と重要文化財の二重の指定を受けています。黒川地区にある円念寺山経塚、黒川上山墓跡、伝真興寺跡の3遺跡を合わせた「上市黒川遺跡群」も、その内容が特に重要であるとして国の史跡に指定されており、当時の剱岳・立山信仰のあり方を物語るものとして全国的に注目されています。
また、山岳信仰の興隆に伴い、多くの人が往来し、物資交流の中心的な商業の町として栄え、現在は、米作を中心とする農業と製造業を中心とする工業が見事に調和した田園工業都市として発展を続けています。農業では、近年、里芋に加えて生姜の特産化にも取り組んでおり、工業では、複数の大手優良企業が本社、研究棟及び製造工場を立地する製薬業が、町の特徴的な産業となっています。
これらの自然・歴史・伝統文化・産業は「町の宝」であり、この「町の宝」を後世に繋ぐため、平成23年7月の観光元年キックオフ宣言以降、積極的にエコツーリズムを推進しています。そして、今般、上市町エコツーリズム推進全体構想が環境大臣、国土交通大臣、文部科学大臣及び農林水産大臣に認定されました。これもひとえに、中心となって活動されている協議会員のご尽力と環境省をはじめ関係者のご支援・ご協力の賜物と、心より深く感謝しております。
今後も、より多くの地域住民、関係団体等と目的を共有し、活動を全町的な取組みへと広げ、認定された全体構想に基づきエコツーリズムの取組みを継続することで、地域が抱える様々な課題の解決や政策目標を達成して参りたいと考えています。
上市まちのわ推進協議会 会長 中川 行孝
上市町は、富山県の県庁所在地である富山市の東約15kmの内陸に位置する人口約21,000人の町です。町の面積は236.7k平方メートルで、その約8割を山林が占めており、人口の約8割が平野部に住んでいます。
町のシンボルである北アルプス立山連峰の名峰剱岳(標高2,999m)は、日本百名山及び新日本百名山に選定されており、圧倒的な存在感を放っています。剱岳は、アルピニストや写真愛好家、画家の憧れとなっており、早月尾根の麓に位置し剱岳の玄関口である馬場島(ばんばじま)には多くの登山客や芸術家が訪れています。
剱岳は古くから山岳信仰の山として知られており、約1,300年前に創建されたという真言密宗の大本山「大岩山日石寺(おおいわさんにっせきじ)」は、山岳信仰や修験道と結びついた密教の寺として隆盛しました。高さが3.2mある日本屈指の磨崖仏が国の重要文化財に指定されており、落差約5.5mから落ちる滝に打たれる滝行や写仏など修行体験もできることから、多くの方が訪れています。特に女性を中心に人気があり、最近は欧米人の観光客も増えています。
約650年前の創建とされる曹洞宗の「眼目山立山寺(がんもくざんりゅうせんじ)」も山岳信仰に由来する名刹で、三十三観音が4か所もあり、富山県の文化財に指定されているトガ(モミ)の木の参道は大変人気のあるスポットです。
平安時代末期から鎌倉時代の寺院・墓地・経塚・行場など、密教に関わる施設がまとまって発見された上市黒川遺跡群は、、当時の宗教や信仰、葬送のあり方と地域社会の関係を示すもので、剱岳・立山信仰の起源や成立、その変遷を知る上でも重要な遺跡として国の史跡に指定されています。
山岳信仰ゆかりの地である大岩・眼目(さっか)・馬場島の3地区の森林について、近年、その癒し効果が科学的データにより実証され、NPO法人森林セラピーソサエティから森林セラピー基地「剱・きらめきの森」<外部リンク>の認定を受けました。現在は、基地に登録する森林セラピスト・森林セラピーガイドの育成を行うとともに、基地を活用した森林セラピーツアーの企画・実施を積極的に行っています。
平成23年7月の観光元年キックオフ宣言以降、地域住民を中心にエコツーリズムの普及啓発を行っており、少しずつ目的や活動を理解して取組に参加する方が増えてきていますが、町全体に浸透するにはまだまだ時間がかかる状況です。
上市町において、持続可能な観光産業を確立するためには、エコツーリズムに関する地域住民の理解を深め、地域にある観光資源の価値を地域住民自らが再確認するとともに、観光関係団体だけでなく、地域の産業を支える農家・商店・製造業など多様な分野・業種の方々を観光産業に巻き込むことで、地域内循環型経済の仕組みを構築し、観光事業による経済効果を地域全体に波及させることが必要です。
協議会では、平成27年6月に「上市まちのわ宣言」を採択し、「上市町にある自然・歴史・伝統文化・産業そして、人を“大きなわわ(輪、和、環)”で繋ぐ」ことを町のエコツーリズム推進の基本方針としました。
上市まちのわ宣言<外部リンク>
上市まちのわ推進協議会では、豊かな地域資源を「町の宝」と表現し、「町の宝を後世に繋ぐ」ことが我々にとっての最大の使命と位置付けています。
この使命の達成に向け、町の宝を「活かす」、「守る」、「伝える」といった3つの活動を行い、持続可能な観光産業の確立と地域内循環型経済の推進を図るとともに、より多くの関係者と使命を共有し、活動を全町的な取組みへと広げ、地域が抱える様々な課題の解決や政策目標の達成に繋げたいと考えています。
森林セラピー基地<外部リンク>を活用した癒しのツアーや寺院での坐禅、滝行、写仏の体験、剱岳を間近に眺めながら屋外で富山の海と山の幸を堪能する森のレストランツアーなど、個性豊かなエコツアーの企画実施を行っています。
また、山菜や中山間地の間伐材、薬膳など、地域資源を活用した土産品の開発・販売を支援することで地域内循環型経済を推進しています。
森林セラピーガイド等により、森での遊び体験を通して、森と人の生活のかかわりや自然の循環、環境保全の大切さを親子で学ぶ「森の学校」を開催しています。
また、全小学校の高学年を対象としたエコツーリズム出前授業を開催するとともに、町内にある専門学校と首都圏にある姉妹校の生徒を対象に、自然体験学習を実施しています。
上市町エコツーリズムの基本方針として協議会が作成した「上市まちのわ宣言」や協議会の活動を紹介したリーフレット<外部リンク>を町内全戸に配付し、エコツーリズムの普及啓発を行っています。また、町の魅力を紹介した情報誌(町民のネタ帳<外部リンク>、かみいちのヒキダシ<外部リンク>)を計13回発行するとともに、その掲載情報を実際に体験できるツアーも実施いたしました。
平成27年度からフォトロゲイニング大会を開催し、県内外からの大勢の参加者に上市町の魅力を体験していただいています。フォトロゲイニングとは、地図を頼りにチェックポイント探し、指定されたポーズの写真を撮って合計ポイントを競うスポーツです。上市町の大会では、地域内の観光地や商店街での飲食、お土産品購入等による経済効果だけではなく、地域にある歴史や伝統文化、優良企業の技術・製品など様々な魅力を知っていただくとともに、地域の人との交流機会を多く設けています。大会の賞品は、地域の企業が自社商品等を提供してくださり、メダルやトロフィーは、地域の若手デザイナーと優れた加工技術を持った企業が連携し、観光PRに繋がるよう工夫を凝らしたデザインで製作しています。また、地域の商店が飲食サービスとして試食品を提供してくださり、大会の趣旨に賛同していただけた地域住民の方々が大会運営資金を小口出資するなど、まさに町が一体となって参加者をおもてなしする手作りのイベントです。このイベントは、「上市ファン」を全国に増やすとともに、地域住民が地域の魅力を再発見し郷土愛を深める機会となっています。
古刹の森で香りを聞く ~こころとからだを癒す森とお寺の旅~
由緒ある古いお寺のことを「古刹(こさつ)」といいます。森に包まれた古刹で森林セラピーを体験します。散策中に感じた香りでアロマクラフトを体験し、森の香りをお土産として持ち帰ることができます。
今日だけ森のレストラン
剱岳の登山口である馬場島で森林セラピーを体験します。森林散策に加え、野外レストランで富山ならではの特別メニューを堪能し、テント泊も体験できます。
森の学校 ~山の暮らし、スノーシューとランチ~
森を散策したり、ふかふかの雪が積もった田んぼや棚田を自由に歩いたり、たき火で料理するなど、冬の森での遊びを楽しみながら、昔から受け継がれる里山の暮らしを知ることができます。
上市ちょっぴり山あるき(城ケ平山・千石城山など)
剱岳周辺にある中低山のトレッキングを楽しみます。戦国時代に城が築かれていた城ケ平山と千石城山の山頂からは、大迫力の剱岳を間近で見ることができるとともに、振り返ると富山平野が一望できます。
ハゲ山スノーシューウォーキング
冬のハゲ山をスノーシューをはいてウォーキングします。はじめてスノーシューを体験する方には、ガイドからスノーシューの装着や歩き方のレクチャーもあります。
大岩ぷちみそぎ修行体験
1,300年続く密教の古刹である「大岩山日石寺」で滝行、写仏、護摩祈祷といった修行体験をします。写仏した紙は、護摩祈祷の後、特製のお守りになります。
上市町エコツーリズム推進全体構想[PDFファイル/1.4MB]
上市町エコツーリズム推進全体構想【概要版】[PDFファイル/229KB]
上市町では、交流人口の拡大を図るとともに、町の宝である地域の自然・歴史・伝統文化・産業といった地域の資源を後世に繋ぎ渡すため、積極的にエコツーリズムに取り組んでいます。
より多くの地域住民、企業団体、その他の町に関わる方々を巻き込み、さらに効果的なエコツーリズムの推進を図るため、観光産業を中心とした持続可能な経済の地域内循環の仕組みづくりを目的とする「上市町エコツーリズム推進全体構想」を策定したものです。
エコツーリズムを推進する地域は上市町全域とし、本町全域にわたって存在する多様な自然観光資源を活用した効果的なエコツーリズムの推進を図ります。
自然環境に係るもの
風習習慣、伝統的な生活文化に係るもの
ルール
案内(ガイダンス)及びツアー
地域内で実施する案内(ガイダンス)及びツアーは、観光振興、産業振興、地域振興、環境教育の場としての役割を担うものと考え、自然観光資源を保全しつつ、次のツアーを実施します。
自然観光資源のモニタリング及び評価
モニタリングの対象を「自然観光資源」と「ツアー実施する上での障害・問題等」に分類し、ツアー実施者等の対象の変化に関する報告を基に協議会の専門部会で対策の必要性を評価します。モニタリングや評価は必要に応じて調査機関や有識者・専門家へ依頼し、対策が必要な場合は、協議会が中心となってツアーの実施方法の改善や関係者間の連携、特定自然観光資源指定の検討等を行います。
自然観光資源の保護及び育成(同項第4号関係)
上市町エコツーリズム推進全体構想のルールを遵守しつつ、自然観光資源を対象としたモニタリングの継続的な実施により対象の変化の迅速な発見・評価に努めるとともに、関係者間での情報共有や有識者・専門家等のアドバイスを基に対策の推進体制の強化を図り、自然観光資源の保護及び育成を進めます。
協議会の参加主体(同項第5号関係)
地域住民、事業者、各種団体、教育機関、その他エコツーリズムに関連する活動に参加する者及び行政機関から構成されています。
その他エコツーリズムの推進に必要な事項(同項第6号関係)
地域振興
地場産品の販売拡大のため、ツアーへの活用と参加者へのPRを積極的に実施し、地域振興へ繋げます。
地域住民との連携
協議会及びツアー実施者は、地域の生活、習わし、農林水産業及び土地所有者等への配慮と地域住民への理解促進に努め、エコツーリズムが地域に貢献できるよう尽力します。
他の法令並びに計画等との関係性及び整合性
エコツーリズムの実施・推進に当たっては、自然観光資源に関する主な法令等を遵守します。
環境教育の場としての活用と普及啓発
森育や環境教育体験活動、出前授業等を実施し、子供たちが地域の自然・歴史・文化への理解を深め郷土への愛情を育み持続可能な社会をつくることの重要性を認識できる機会を設けます。
安全管理
ツアー実施においては、参加者とツアー実施者の安全を確保し、「ツアーを行う上でのルール」を遵守するとともに、更なる安全性の確保に積極的に取り組みます。
全体構想の公表
全体構想の作成、変更または廃止を行った時は、上市町の広報及びホームページで公表し、広く一般に周知します。
全体構想の見直し
協議会において全体構想の推進状況を把握、整理し、概ね5年ごとに見直しを行います。
上市町観光協会<外部リンク>
里山の駅つるぎの味蔵<外部リンク>